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メディア・エクスプリモ シンポジウム2009: 「情報があふれかえる社会」から「表現が編みあがる社会」へ]

2009.10. 3

第15回公開研究会報告
メディア・エクスプリモ シンポジウム2009: 「情報があふれかえる社会」から「表現が編みあがる社会」へ

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■日 時:2009年10月3日(土)13時〜18時(その後、交流会あり)
■会 場:東京大学本郷キャンパス
     工学部新2号館9階93B情報学環スペース
■共 催:メディア・エクスプリモ (http://www.mediaexprimo.jp/)
      メル・プラッツ (http://www.mellplatz.com/)
■参加者:約100名
■タイトル:メディア・エクスプリモ シンポジウム2009:
          「情報があふれかえる社会」から「表現が編みあがる社会」へ

■プログラム:
【12時30分】開場
【13時〜13時45分】
 ○あいさつ
  須永剛司(多摩美術大学) 、西村拓一(産業技術総合研究所)、
  堀浩一(東京大学)、水越伸(東京大学)
 ○基調報告
  須永剛司
【13時50分〜14時50分】
 ○水越&堀グループ報告
 「メディア実践のひろがりを支えるために」
【15時〜16時】
 ○須永&西村グループ報告
 「メディア表現の深化をめざして」
【16時〜16時30分(休憩)】
 ○活動展示、システムデモンストレーションほか
【16時30分〜17時45分】
 ○パネルディスカッション
  境真理子(桃山学院大学)、本橋春紀(BPO 放送倫理・番組向上機構)
  須永剛司ほか メディア・エクスプリモのメンバー
【18時〜19時30分】
 交流会

■概 要:

メディア・エクスプリモと共催のシンポジウムは、4人のグループリーダーによるビデオメッセージで幕を開けました。「現実の社会とつながる学問としての情報デザインを通じて、市民の表現を社会の財として復権したい」と語ったのは、プロジェクトリーダーの須永剛司さん(多摩美術大学)。「いま起こっている表現活動を分析し、実世界のワークショップとつなげたシステムを開発したい」と西村拓一さん(産業技術総合研究所)。「人と人、人と表現、表現と表現、を反応させる触媒としての情報技術を追究したい」と堀浩一さん(東京大学)。「人文知や批判知を活かしつつ、これからのメディアのあり方を構想していくメディア論に取り組んでいる」と水越伸さん(東京大学/メル・プラッツ運営メンバー)。


【基調報告「情報デザインによる市民芸術創出プラットフォームの構築」(須永剛司さん)】

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メディア・エクスプリモが5年のあいだに目指しているのは、「人びとがそれぞれの生活世界を表現すること、見つめること、その良さに気づくこと」であり、「そこに表現を大事にする社会が生まれてくること」です。メディア・エクスプリモにとってデジタルメディアは、一言でいうと、「表現を拡張する技術」。デジタルメディアによって、表現の結果だけでなく、表現のプロセスを視覚化できるようにするとともに、表現群を俯瞰し、表現の意味や意図を解体し、再構成できるようにします。そのためには実践からプラットフォームを描く必要があり、技術システムと文化プログラムの統合利用ができる環境をつくることが重要になります。

将来的には、表現の道具と活動プログラムを組み合わせた「活動ユニット」がいろいろ提供できるようになる、と須永さんは話しました。


【「メディア実践のひろがりを支えるために」(水越グループ:鳥海希世子さん+堀グループ:沼晃介さん)】

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以上の構図にもとづいて、水越グループの鳥海さん(メル・プラッツ運営メンバー)と堀グループの沼さんは、まず、実践活動における問題意識として、(1)ある程度の地域的ひろがりのなかで、普段出会わない人びと同士、語り合わないような人びと同士を結びつけること、(2)ひとつひとつの表現そのものが連携し、関係しあうようなワークショッププログラムのデザイン(技術システムの活用)の重要性を挙げました。このことを踏まえて、ふたつのワークショップの成果を報告。

ひとつは、「ケータイ・トレール!ワークショップ」。携帯電話の動画機能を活用したストーリーテリングで、Q&A形式のルールにもとづく語りのリレーです。Ars Electronica Festival 2008(オーストリア・リンツ)での実践は、フェスティバル参加者とリンツ市民をつなぐプログラムで、多くの人びとの語りを得る(ひろがりを支える)ことを目的としていました。展示会場内と周辺市街で、人びとの持ち物についてのストーリーを集め、つないでいくという活動を実施。それに対して、南海放送(愛媛県松山市)での実践は、人びとの語りを集め、つないでいく活動を、ラジオのコミュニティづくりに重ね合わせ、実践に参加した高校生たちがラジオへの理解を深めることと、ラジオコミュニティの再生を図ることを目指しました。いずれの場合も、システムによって協働的な語りが可視化され、地域に広がっていった活動です。

もうひとつは、神奈川(湘南)、愛知(豊橋)、東京(文京区)で実践した「あいうえお画文」。協働的な創作を通して、地域に対するイメージのステレオタイプを異化し、多角的な視点を得ることのできる場づくりを目指しました。地域に関する個人的な記憶を、画文という簡易な形式に沿った遊びを通じて共有し、発表、公開、合評をおこないます。これを繰り返すことで表現が継続的に発展していくことを目指しました。

以上のように、道具(モノ)と身体による表現モードの考察を深め、情報システムと一体となった活動デザインの構築を目指した文理越境の研究実践を、鳥海さんと沼さんは紹介しました。


【「メディア表現の深化を目指して」(須永グループ:小早川真衣子さん+敦賀雄大さん+西村グループ:久保田秀和さん)】

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続いて須永グループと西村グループの報告です。これまでの両グループの実践について、須永グループの小早川さんは、ミュージアムや学校といった社会的文化施設をフィールドにしていると言い、表現を媒介として学びを社会化することを目指してきたと話しました。須永グループは表現の道具をデザイン、西村グループはそれを情報技術の観点からサポートし、一緒に活動をつくってきました。さまざまな表現を組み合わせ、実践地の状況や目的に合わせ、活動プログラムをデザインしています。

須永グループの敦賀さんは、ミュージアムにおける協働的な表現活動プログラムと、その活動を促進する視覚表現ツール「Zuzie」を紹介。表現活動プログラムのデザインとは、(1)その活動から生み出される表現物、(2)活動の時間割、(3)道具と人びとの空間配置、以上のすべてを見据えたものであり、いわば「表現の可能性空間」の協働デザインであると敦賀さんは語りました。

この「Zuzie」の世界に3ヶ月間どっぷり漬かったという西村グループの久保田さんは、情報工学における情報可視化、仮想作業空間との共通項を見出したそうです。実世界での表現活動における実世界指向インターフェイスに取り組む西村グループにおいて、久保田さんは「Zuzie」の評価実験をおこなったうえで、情報可視化分野におけるアニメーション表現研究の新しい端緒として期待できると言います。


【パネルディスカッション(境真理子さん、本橋春紀さん、須永剛司さん、ほか)】

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最後のパネルディスカッションで口火を切ったのは、本橋春紀さん(BPO放送倫理・番組向上機構/メル・プラッツ運営メンバー)。「ワークショップの先に『社会的な何か』があるはずだが、まだそこには達していない。ワークショップのことを考えるときに、『表現』という言葉がキーワードになっている。普通に生活している人にとっての『表現』とは何か。最初から持っていたものを表現したのではなく、ワークショップという場に参加しているうちに引き出された表現のようだが......」。本橋さんの問題提起に須永さんは、「僕が考えている『表現』とは、頭のなかにあったものを外化するのではない。自分の目の前にあることを、謙虚に写すこと。実世界とそれを写したものを比較することによって、身の回りの実世界を見つめた『自分』という存在に気づくことができる」と答えました。水越さんは、「参加した人の気づきや振り返りに対する考察が、今はまだ不十分。僕たちが仕掛けるワークショップの先に、参加した人びとがわれわれの助けなしに、自分たちで活動を始めることができるのが理想」とコメント。

境真理子さん(桃山学院大学/メル・プラッツ運営メンバー)は、「文理融合は難しい。この難しい状況を切り開いていこうという試みは野心的。ツールやデバイスがたくさん溢れ、テクノロジーがすぐに古くなるなかで、何がそれを乗り越えていくのか」という問いを提起。境さんは続けて、「コンセプトが残らなかったら一過性の活動になってしまう。最後は人。それが残れば浸透力を持つ。道具性に特化してしまうと、迷路に入ってしまうのではないか」と指摘しました。

水越さんは、「『表現』という言葉に対して、美術系、工学系、人文系で考えていることが違っていて、良くも悪くもきれいに統一できていない」と前置きした上で、「違いはあるが、異文化コミュニケーション的に理解できるようになってきている」と述べました。「Web2.0というフェーズのなかで出てきている多様な商用サービスのなかで、既に人びとは何らかの『表現』をしている。技術はたしかにいろいろ出てきているが、それに全部頼ってしまうことの気持ち悪さがある。コンビニやショッピングセンターがあればいいという感じに似ていて、mixiやニコニコ動画にもそういうものを感じる。それに対して、自分たちがシステムに関わることを感じながらやっていくことが重要。技術から文化までを垂直に串刺しするようなリテラシーの閃き、とでも言うべきだろうか」。

西村さんは、「表現をより深くしていくことと、社会的に広げていくことのふたつを、どのように技術的に結びつけていくか、いまの時点では決定打には至っていない」と述べた上で、「『表現したいな』という思いには、それを受け止めてくれる人がいることを実感することが重要。社会ネットワークの本質というのは、人と人が信頼関係をもって結びつくこと。表現が連鎖し、人びとの生活に着地していくことが重要で、そのための起爆剤になるようなシステムをつくれるといい」という意気込みを語りました。

最後に須永さんは、「この試みが科学技術と文化芸術のなかにどんな新しい種を植えるのか、じっくり言っていかないといけない。やりながら気づいていることであり、これからしっかり考えていきたい」と締めくくりました。


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報告者:飯田豊(福山大学/メル・プラッツ運営メンバー)

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